たびフォト📷

KD Kong
2025/10/20 21:55

時を旅する宿。伊豆の名旅館「おちあいろう」で過ごす、文化財に泊まる休日

日常の喧騒から逃れ、ただ静かに流れる時間に身を委ねたい。

そんな思いで私が選んだのは、多くの旅好きが一度は泊まってみたいと願う、伊豆天城の名旅館「おちあいろう」。

 

「登録有形文化財に泊まる」という言葉に強く惹かれ、まるで時間旅行に出かけるような期待感を胸に、天城の深い緑へと車を走らせました。

 

 

### 扉を開ければ、そこは明治浪漫の世界

 

のれんをくぐり玄関に足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのを感じました。

ひんやりと澄んだ空気の中に、長年磨き込まれた木の香りがふわりと漂います。

それはまるで、現代から明治時代へと誘う香り。

ギシ、と心地よく鳴る廊下を進むと、そこかしこに施された精緻な組子細工や見事な欄間が目に飛び込んできます。

ここは宿であると同時に、職人たちの魂が宿る美術館そのもの。

ただ移動するだけの廊下が、これほどまでに心躍る空間になるとは思いもしませんでした。

特に、夕暮れ時に行灯の灯りが灯された廊下は、幻想的で言葉を失うほどの美しさでした。

 

 

### 川のせせらぎをBGMに、何もしない贅沢

ラウンジの窓辺は、二つの川が落ち合う景色を望む特等席。

窓を大きく開けると、ゴォー…という川の流れる音が心地よいBGMとなって部屋を満たします。

陽光が差し込む昼間も素敵ですが、夜の帳が降りると、しっとりと落ち着いた雰囲気に表情を変えます。

ただ窓辺の椅子に座り、川の流れと木々の緑を眺めて過ごす。これこそ、私が求めていた「何もしない贅沢」。

 

お部屋に置かれたお茶とお菓子をいただきながら、備え付けの宿の歴史を綴った本をめくります。

文豪たちが愛したこの場所で、彼らと同じ景色を見ている。そう思うだけで、日常が遠く離れていくのを感じました。

 

 

### 伊豆の恵みを五感で味わう、芸術的な夕食

 

食事は、旅の大きな楽しみの一つ。

おちあいろうの夕食は、その期待を遥かに超えるものでした。

美しいセッティングの個室でいただくのは、天城の清流で育った山葵や新鮮な海の幸など、伊豆の恵みをふんだんに使った創作和食会席。

一品一品がまるで芸術品のように美しく、口に運ぶたびに驚きと感動があります。

料理長の丁寧な仕事と、食材への愛情がひしひしと伝わってきました。

オールインクルーシブなので、お料理に合わせた地酒やワインを気兼ねなく楽しめるのも嬉しいポイントです。

 

 

### 「おちあいろう」を120%楽しむためのヒント

今回の滞在を通して感じた、これから訪れる方へのささやかなヒントです。

1. 「館内探検ツアー」にぜひ参加を!
   毎日開催されている、スタッフの方による館内案内ツアーは必見です。

建物の歴史や、見過ごしてしまいがちな彫刻に込められた意味などを聞くことができ、宿への理解と愛情が何倍にも深まります。予約不要で気軽に参加できるのも魅力です。

 

2. 湯上がりの一杯は、ぜひラウンジで

湯上がりのビールや日本酒、コーヒーなどが、趣のあるラウンジに用意されています。

美しい庭園や暖炉の炎を眺めながらソファで寛ぐ時間は、まさに至福。

夜にはバーカウンターでゆったり身を委ねるのもおすすめです。

 

3. 荷物は少なめに、お洒落な浴衣で過ごす

館内は基本的に浴衣で過ごします。

デザイン性の高い素敵な浴衣が用意されているので、洋服は最低限で大丈夫。

身も心も軽くして、明治浪漫の世界に浸りきるのがおすすめです。

 

 

 

### 旅の終わりに

朝、鳥の声と川の音で目覚める。

ラウンジで淹れたてのコーヒーをいただきながら、緑豊かな庭園を眺める。

おちあいろうでの一泊二日は、単なる宿泊ではなく、日本の美意識と歴史を全身で感じる「文化体験」でした。

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